もともとはただの森でした。
学校法人広島女学院ゲーンス幼稚園の「ぼうけんのもり」は幼稚園に隣接した子どもたちが自由に遊べる場所で、人が通るところがだんだんと道になっていきました。どこになにがあるか、今日の遊び場所をどこにするかは、子どもたちだけが知っている、そんな場所だったんです。
「ぼうけんのもり」という名前の通り、子どもたちは日々冒険していました。

「ぼうけんのもりマップ」は、この森のどこになにがあるのかを俯瞰したイラストマップです。森の入り口にマップが掲示されると、ある変化がありました。いつものように森に遊びに行こうとする子どもたちが、この看板の前で立ち止まって、今日はどこに行こうか、と話し合うようになったのです。
子どもだけでなく、参観日に幼稚園にやってきた保護者も看板の前で立ち止まります。このマップを見ることで、子どもたちの「ぼうけん」を俯瞰的に見つめることができるようになりました。

イラストマップには、森の中のエリアに名前がついています。「あっち」が「うがじいのみち」という名前を持った場所になるのです。ところどころに、どちらに行けばなにがあるかを案内するサインも設置しました。

子どもたちが日々冒険するなかで開拓されていった森。そんな森の中の場所へ、ほかの人もたどり着けるようにする、あるいはまわりの大人たちも把握して、コミュニケーションをとれるようにする、そのための見取り図として、このイラストマップは機能しました。
これは、絵やデザインのごく原始的な価値を提供する仕事だったように思います。
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